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『戦姫絶唱シンフォギア』SymphoNare ライブレポート

2025年9月6日(土)、TVアニメ『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ初となるフィルムコンサート「SymphoNare(シンフォナーレ)」が、東京・立川ステージガーデンにて開催された。

本公演は、『シンフォギア』プロジェクトにおける新たな音楽企画「SYMPHO&GEAR(シンフォ アンド ギア)」の一環で、「SYMPHO」に焦点を当てた「SymphoNare」シリーズとして始動した。
オーケストラによる生演奏で、本作の世界観を新たな音楽的解釈で表現する。

演奏は数々のアニメーション音楽のフィルムコンサートを手がけてきたHeartbeat Symphony、指揮は吉田行地さん、コーラスは歌人三昧サマディ、そして昼公演には雪音クリス役・高垣彩陽さん、夜公演には風鳴翼役・水樹奈々さんがスペシャルゲストとして出演。
本稿では昼夜にわたって開催された公演を併せてお届けする。


オーケストラとコーラスがステージに揃い、静謐な空間にチューニングの音が響き渡る。
静寂の後に指揮者の吉田さんが登場し、 “鼓動”が鳴り響くと、劇伴「少女の歌には、血が流れている」が開幕を告げる。

続いては、天羽 奏(CV:高山みなみ)と翼によるユニット・ツヴァイウィングの「逆光のフリューゲル」
『シンフォギア』シリーズの幕開けを飾った楽曲であり、第1話のライブパートで衝撃的な存在感を放った。
「SymphoNare」においても、二人のオーケストラライブのようなアレンジが施され、客席もそれぞれのカラーであるオレンジと青のペンライトで応援していた。

戦闘曲のメドレーコーナーは、奏の「君ト云ウ 音奏デ 尽キルマデ」、立花響の「撃槍・ガングニール」でフォニックゲインがぐんぐんと高まっていく。
翼の「絶刀・天羽々斬」ではコーラスが、クリスの「魔弓・イチイバル」ではバンドサウンドが強烈な印象を残し、メドレーを締めくくる響の「私ト云ウ 音響キ ソノ先ニ」では、「奏者の歌声」「バンドサウンド」「オーケストラ」が渾然一体となった。
メドレーコーナーは、まさに「SymphoNare」の真骨頂ともいえるコーナーに。

ここからの楽曲はオーケストラとバンド、コーラスのみのアレンジ。
まずは響と小日向未来をフィーチャーした映像をバックに、劇伴「木漏れ陽が綴る」がピアノとオーケストラによって演奏され、未来の「陽だまりメモリア」へ。
響と未来のかけがえのない日常が映し出され、会場にもあたたかい空気が広がっていった。
「Flight Feathers」では、コンサートマスターのヴァイオリンが翼の歌声をなぞっていく。
そのメロディはオーケストラへと受け渡され、ドラマチックで豊潤な演奏が披露された。

劇伴「往く風に、想い馳せて」がピアノソロによってしっとりと演奏されると、クリスの「繋いだ手だけが紡ぐもの」では一転して壮大なオーケストレーションに。
ピアノと木管が中心となった繊細なA、Bメロを経ながら徐々に力強さを増し、サビではドラムが勢いよく加わるという劇的な構成。
孤独から連帯へと至るクリスの立場と心境の変化そのものだった。

「FIRST LOVE SONG」は、装者が歌を紡いでいったように、ストリングス、金管、木管と、オーケストラの各パートがメロディのバトンを繋いでいく。
サビではギターも加わり、映像は第1期クライマックス。
「一人じゃない」という力強いメッセージが伝わってきた。

第1期の主題歌パートでは、昼の部はOPテーマ「Synchrogazer -Aufwachen Form-」をオーケストラとコーラスが担当し、EDテーマ「Meteor Light」を高垣彩陽さんが歌唱した。
赤いドレスをまとった高垣さんがステージに登場すると大きな拍手が湧き上がる。
高垣さんはステージの上手下手を移動しながら、力強く、高らかに歌い上げ、Dメロでは異次元のファルセットを聴かせた。

夜の部では「Synchrogazer -Aufwachen Form-」を水樹奈々さんが歌唱。
「盛り上がっていきましょう!」と客席を煽り、客席からも大きな声があがる。
完全にライブモードの熱気となりながら、オーケストラとコーラスが絶妙に絡み合い、デジタルロックとオーケストラの融合が実現。
シンフォニックなロックの音圧が会場を飲み込んだ。

トークパートには、昼の部に高垣彩陽さん、夜の部に水樹奈々さんが登壇。
さらに『シンフォギア』シリーズの音楽を多数手がけてきたElements Gardenの藤田淳平さんが昼夜両方のゲストとして参加し、「SymphoNare」の感想や過去シリーズの思い出に花を咲かせた。

まずは第1期を取り上げた第1部を振り返った。
高垣さんも水樹さんも胸を打たれたと語ったのが、「FIRST LOVE SONG」。
舞台袖で聴いていたという高垣さんは、「始まる前なのに涙が出そうになった」と語り、水樹さんはZepp DiverCityで行われた「シンフォギアライブ2012」の思い出が蘇ったようで、「あおちゃん(悠木碧)と一緒に泣いたことをグッと噛みしめつつも、ここから飛ばしていこうと思いました」と語った。

自身の楽曲については、「この編成で歌わせていただくのは初めて」と高垣さん。
「リハーサルに行ったら、いっぱい人がいて、楽器もいっぱいあって…。こういうオケね、オッケー!」と、得意のギャグをかまして大きな笑いを誘った。
一方、フルオーケストラライブを3回経験している水樹さんだが、「Synchrogazer」を取り上げるのは今回が初。
「デジタルロックの要素が強いので除外していたんです。
でも、今回オーケストラとの融合を素晴らしいアレンジで形にしてくださって、鳥肌が立ちました」と感動をあらわにした。

藤田さんは、今回のフィルムコンサートを「オーケストラとライブのいいとこ取り」だと位置づける。
オーケストラは繊細な音も迫力のある音も出せるが、テンポが速く、デジタル要素の強い『シンフォギア』楽曲をオーケストラだけがやるのは難易度が高い。
そこで『シンフォギア』らしさを出すために、辿り着いたのが指揮者の前のドラムセットだという。
「今回はドラムとギターも置いて、静かでしっかり聴かせるものと、迫力を持って聴かせるものの両方用意したかった」と、編成の意図を語ってくれた。

また、オーケストラの魅力についても藤田さんが解説してくれた。
「(一つのメロディを)ヴァイオリンだけで演奏することもできますが、まずヴァイオリンがメロディを弾いたら、次はフルート、次はホルンというふうに、メロディの受け渡しをできるのがオーケストラアレンジの特徴でもあります。同じメロディなのに音色が毎秒変わり、豊かな響きになる。それがオーケストラの魅力だと思います」。

数々の“戦場(いくさば)”が語られたのも『シンフォギア』らしい。
アフレコ現場で歌うという挑戦、オリジナル作品を手探りの中で作るという緊張感、刺激だらけの現場を経て生まれる絆……などなど、高垣さんも、水樹さんも、“戦友”としてのスタッフ、キャストに思いを馳せながら作品を振り返っていった。
劇場版も鋭意制作中とのことで、過去と現在を振り返るだけではなく、未来への期待が高まるトークパートとなった。

後半戦はシリーズ第2期となる『戦姫絶唱シンフォギアG』がフィーチャーされた。
第2部のオープニングを飾ったのは、昼の部が高垣さんの歌唱による第2期EDテーマ「Next Destination」、夜の部が水樹さんの歌唱による第2期OPテーマ「Vitalization」
「Next Destination」のサビでは高垣さんの歌声に木管が寄り添い、切なさと優しさが増幅していった。
一方、水樹さんはコーラス隊も全力! 観客も全力! というパワフルなステージに。
どちらもオーケストラとバンドサウンドの融合という点では一緒だが、対照的な表現となっていたのが印象的だった。

続いては、第2期のキーパーソンであるマリア・カデンツァヴナ・イヴの「Dark Oblivion」
男女混成のコーラスが全編を歌い上げる大幅なアレンジで、まるで壮大な合唱曲やオペラを聴いているような感覚に。
さらにマリアと翼による「不死鳥のフランメ」では、オーケストラの対比構造が明確になり、木管、金管、ストリングス、コーラスがメロディを引き継ぎながら、翼とマリアの“つばぜり合い”を演出していった。

静寂の中、響き渡ったのは同声二部による「Apple」
童謡のような楽曲が、どこか聖歌のように聞こえる表現に。そして、ここからは戦闘曲のメドレーコーナーとなり、キャスト陣の歌声とオーケストラが絡み合っていく。

メドレーのトップを飾ったのは、マリアの「烈槍・ガングニール」
勇壮なアレンジとコーラスの力強さでマリアの登場シーンを彩っていった。
よりバンド感が強まった響の「正義を信じて、握りしめて」、オーケストラによって妖艶な空気が強まった月読調の「鏖鋸・シュルシャガナ」、そしてオーケストラで“和”の空気感を表現し切った「月煌ノ剣」と続いていった。

暁切歌の「獄鎌・イガリマ」は、「鏖鋸・シュルシャガナ」とともに2曲が重なる「Edge Works of Goddess ZABABA」としても知られている。
ライブで単独で取り上げられるのは適合者にとっても嬉しいセットリストだ。
ラストを飾った「Bye-Bye Lullaby」もそうだが、メドレーパートは第1部同様、それぞれの戦闘シーンの映像とともに、「SymphoNare」らしい「奏者の歌声」「バンドサウンド」「オーケストラ」の融合が実現した。

ピアノとストリングスによって奏でられたのは、劇伴「比翼の鳥、どこまでも(私立リディアン音楽院校歌)」
ピアノ協奏曲風にアレンジされた楽曲を経て、調と切歌の「ORBITAL BEAT(ver.ZABABA)」へ。
コンマスとギタリストが立ち上がり、まるでヴァイオリンとギターのための二重協奏曲のような掛け合いを見せる。
背景に映し出される私立リディアン音楽院の「秋桜祭」で、二人が歌唱する姿も愛おしかった。
その後、「秋桜祭といえば!」の「現着ッ!電光刑事バン(ver.秋桜祭)」へ。
まさかのオーケストラアレンジに加え、板場弓美(CV:赤崎千夏)、寺島詩織(CV:東山奈央)、安藤創世(CV:小松未可子)のセリフ入りで、会場を沸かせた。

続いては、昼の部が高垣さんによる「教室モノクローム」、夜の部が水樹さんによる「恋の桶狭間」
「教室モノクローム」はクリスが“帰る場所”を歌った楽曲であり、クリスの心境の変化が描かれた楽曲だ。
ストリングスの切なくも晴れやかなメロディとドラムによる高鳴るビートが重なり、彼女の“雪解け”を感じさせる胸アツな一曲となった。
「恋の桶狭間」は、トップアーティストの翼が劇中のカラオケで歌った歌謡曲。
水樹さんのコブシの入った歌唱とオーケストラによる生演奏という贅沢な構成が、翼のかわいらしいポンコツシーンを引き立て、会場を大いに湧かせた。

金管が中心となったスポーツの応援歌のようなアレンジ&コーラスとなった「英雄故事(Ver.Training Day)」は、会場が盛り上がるだけではなく、パーカッション組が大いに楽しんでいたのも印象的。
『シンフォギア』楽曲の懐の深さを感じさせる一曲だった。

悲痛な叫びともとれる合唱から始まったのは、『歪鏡・シェンショウジン』
木管と金管がメロディを受け渡し、ストリングスがそれを支えながら、サビで顔を出す。
妖しく揺れ動く未来の想い――重く、かつまっすぐな想いが伝わってきた。
だからこそ、『Rainbow Flower』がより感動的だったのだろう。
未来と対峙する響の力強い叫びが金管によって表現され、そのメロディを支えるコーラスが、響をさらに後押ししていった。

フィルムコンサートのラストを締めくくったのは、「始まりの歌(バベル)」
コーラスとハープによる絶唱から始まり、オーケストラとバンドがそのメロディをなぞり、楽曲が加速していく。
奏者たちの最後の戦いがスクリーンに映し出され、大きな盛り上がりとともにフィルムコンサートを締めくくった。

アンコールは、『戦姫絶唱シンフォギアGX』のキャロル・マールス・ディーンハイム(CV:水瀬いのり)の「殲琴・ダウルダブラ」からスタート。
キャロルを象徴するこの怒りと悲しみのレクイエムが、バンドとオーケストラの可能性をさらなる高みへと至らせる。
ラストを飾る『虹色のフリューゲル』は、まさに絶唱のようなオーケストラとコーラスにより始まった。
各パートがフィルムコンサートの締めくくりに相応しい力強い演奏と歌唱を披露し、大喝采の中、公演を締めくくった。

オーケストラとバンド、そしてキャスト陣の歌声によって、『シンフォギア』シリーズの新たな可能性を提示した「SymphoNare」。
総勢75名にも渡る大編成のオーケストラと、音楽に合わせて紡がれた新たなアニメーション映像は、かつてないほどの追体感を得られるコンサートとなったはず。
今回は第1期、第2期が中心となったが、アンコールによって示唆された“今後の展開”にも期待が高まる。


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